アイヌ・先住民研究センターの特徴やスタッフなどを紹介します

センターについて - nep kusu

アイヌ・先住民研究センターの役割

アイヌ・先住民研究センターの役割2005年12月に中村睦男・北海道大学総長(当時)は、これまでの本学とアイヌ民族との歴史的経緯を踏まえ、民族の尊厳を尊重しつつ、アイヌをはじめとする先住少数民族に関する全国的・国際的な研究教育を実施することを本学の「責務」であると宣言しました。総長ステートメント/PDFファイル 242キロバイト アイヌ・先住民研究センターは、この宣言を踏まえ、2007年4月に北海道大学の共同教育研究施設として設置されました。当センターは、多文化が共存する社会において、とくにアイヌ・先住民に関する総合的・学際的研究に基づき、それらの互恵的共生に向けた提言を行うとともに、多様な文化の発展と地域社会の振興に寄与していきたいと考えています。

社会への発信と教育

社会への発信と教育当センターには、歴史学、考古学、文化人類学、博物館学、言語学、憲法学を専門とする8名の専任教員が所属しており、アイヌ民族や各国の先住民族に関する調査や研究を学際的に展開しています。このような研究の成果を社会に発信するとともにアイヌの人々に活用していただくために、当センターでは、専任教員による公開の講座を実施しています。また、アイヌ民族をはじめとする先住民族の言語、歴史、文化、法制度、知的財産権等の研究、あるいは先住民族に関する文化施設の展示や運営等の専門家を国内だけでなく海外からも招聘して、市民にも開いた講演会等を定期的に実施しています。とりわけ、原則として年に2回開催される国際シンポジウムでは、アイヌ民族の言語の回復、文化の再生、生活の向上等に関する政策のあり方やアイヌ民族が取り組むべき課題について実践的に検討できるよう、先住民族が暮らす各国の大学等に所属する研究者だけでなく、先住民族の成員として民族団体や政府機関等に所属している方々からも、自身をとりまく実情について詳しくお話しいただいています。 北海道大学の学生に対する教育については、各学部や研究科等と協力しながら、学部教育と大学院教育においてアイヌ民族に関する授業を提供しており、これからの社会を担ってゆく学生がアイヌ民族の過去と現在について理解し、アイヌ民族と共生する未来を志向できるような教育に努めています。また、博物館学や社会教育学等の研究の一環として、本学の総合博物館等とも協力しながら、アイヌ民族や各国の先住民族をテーマとする企画展示も実施しており、既存の博物館展示とは一線を画した新たな展示方法を模索しながら、アイヌ民族や先住民族に関する固定観念や先入観を超えて現在を生きる先住民族の人々の実情を伝えるように努めています。

学際的な研究

学際的な研究当センターには、専任教員の他に、北海道大学の様々な研究科等に所属している12名の兼務教員がおり、専任教員が専門としている学問分野の他に、政治学、教育学、観光学をはじめとする様々な学問分野でも、アイヌ民族や各国の先住民族に関する研究に取り組んでいます。また、それぞれの学問分野ごとに、国内の諸大学や研究機関等はもちろん、先住民族が暮らす各国の諸大学や先住民族の諸団体等とも連携しながら共同研究を推進しています。とりわけ、国立政治大学(台湾)、ハワイ大学、オクラホマ大学、トロムソ大学(ノルウェー)、ヘルシンキ大学(フィンランド)及びサイモン・フレーザー大学(カナダ)などの先住民族研究機関と密接な研究交流を進めているだけでなく、大学間学術交流の窓口としても機能しています。 アイヌ民族をはじめとする先住民族研究では、とりわけ言語学、歴史学、考古学等の分野において歴史的な文献や資料を収集して分析する作業が不可欠です。また、アイヌ民族や各国の先住民族の貴重な文化財は、各国の研究者やコレクターの収集によって、あるいは先住民族間の交流によって、各国に散逸しており、それらすべてについて体系的に分析するためには、国内の諸大学や研究機関等はもちろん、そのような文献、資料、文化財等を所有している各国の諸大学や先住民族の諸団体等とも情報を共有することが重要です。当センターは、先住民族に関する研究を効果的に推進するため、国内および各国の諸大学や研究機関等と連携しながら、先住民族に関する情報ネットワークの構築を推進しています。

実践的な文化伝承等への貢献

実践的な文化伝承等への貢献アイヌ文化といっても、歴史的な文献や資料を通して明らかになる伝統的な生活習慣や文化と、現在を生きるアイヌの人々によって維持され、あるいは新たに形づくられている生活習慣や文化は、当然のことながら同じではありません。したがって、当センターは、アイヌ民族の文化伝承のあり方に関する研究も重視しています。たとえば、博物館におけるアイヌ文化の展示のあり方に関する研究では、博物館の展示を通して「これがアイヌ文化である」と本質主義的に定義づけてしまうことのないように、現在を生きるアイヌの人々とともに、現代的なセンスを反映させつつ伝統的な工芸技術等を伝承するという実践的活動に取り組んでいます。また、アイヌの人々が北海道内の各地で実施しているアイヌ語教室についても、各地のアイヌ語の特色を反映したアイヌ語教育の実施に向けて協力するとともに、白老町の㈶アイヌ民族博物館において実施されているアイヌ民族の伝統的な知識や技術等の伝承者育成事業にも情報や研究成果等を提供しています。 このように、当センターは、アイヌの人々と協同しながら研究教育を推進することにより、アイヌ民族の文化伝承等に実効的に寄与するよう努めています。

アイヌ政策の推進への助言

アイヌ政策の推進への助言当センターは、アイヌ民族や各国の先住民族に関する研究に特化した国内唯一の研究拠点であることから、2008年6月の「アイヌ民族を先住民族とすることを求める」国会決議以来、国において進められているアイヌ政策の総合的推進に対してセンター自身の研究成果に基づく専門的助言をするとともに、アイヌ民族の声並びに諸外国の経験を伝える役割を担っています。先住民族政策は我が国にとって未知の領域であるだけに、センター関係者に限らず、この分野に専門的知見を有する人々のポジティブなアドバイスが必要だと考えています。 このように、当センターは、アイヌ民族の文化を振興し、社会的地位を向上させるための政策等の実現に寄与することにより、アイヌ民族が誇りをもって自らの文化を享有し、伝承してゆける社会の実現に貢献できるよう努めています。

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