アイヌ・先住民研究センターの特徴やスタッフなどを紹介します

センター長挨拶 - cipapa uwerankarap itak

我が国唯一のアイヌ研究及び先住民研究の教育研究拠点として

 

センター長/加藤 博文

 

北海道大学アイヌ・先住民研究センターは、アイヌ民族をはじめとする世界各地の先住民族の研究に特化した我が国唯一の国立研究組織として2007(平成19)年4月に設立されました。以来、学内共同研究施設として、先住民研究の深化を目指すとともに、先住民研究の国際ネットワークの構築に努め、先住民族としてのアイヌ民族の権利獲得と社会的地位の向上、我が国における理解促進に貢献すべく取り組んできました。

2019年4月からは、北海道大学大学院文学研究科が改組されて新たに発足した大学院文学院にアイヌ・先住民学講座として参画し、これまでの研究活動に加えて、修士課程及び博士課程における人材育成にも取組みはじめました。アイヌ研究、先住民研究において博士学位取得が可能な教育組織は、我が国において初めてのものです。これからも7名の専任教員と、13名の兼務教員一同が力を合わせて、当該領域を担うアイヌ民族をはじめ次世代若手研究者の育成に貢献に力を注ぎいでいきます。

アイヌ民族の大地に在る意味

北海道大学は、アイヌ民族が祖先から受け継いできた大地にそのキャンパスをおいています。私たちは、北海道を内国植民地とする殖民政策の先駆けとして設立された高等教育機関を起源とする歴史を真摯に受け止める必要があります。

アイヌ・先住民研究センターの設立に先立ち、2005年12月に、当時の中村睦男北海道大学総長は、人類学研究の目的で収集され、医学部に保管されてきたアイヌ民族の祖先の遺骨と、文学部が管理する古河講堂で発見されたサハリンの先住民族ウィルタや朝鮮半島から収奪された遺骨に言及して、これまでの民族の尊厳に対する適切な配慮を欠いた取り扱いに対して真摯に反省し、これらの経験を深く記憶に刻む必要があると述べました。そして、この歴史を踏まえて北海道大学の今後の進むべき方向を検討すること、また自らの責務を果たしていくことを表明しました。

当センターは、この2005年の総長表明を出発点として、過去の歴史を記憶し、真摯に反省する中から、アイヌ民族と共に新たな未来を構築することが責務であると考えています。研究センターとして、国際水準の研究を進めることで北海道大学の国際化に貢献することも重要な役割ですが、当センターの活動の基軸には、センター設立以来のアイヌ民族との連携、アイヌ民族との協同という基本方針があります。センターにとって、アイヌ民族が運営に参加すること、センターの研究テーマや事業を共に企画実施することが大切であると考えています。

北海道から世界へ、世界から北海道へ

私たちは、アイヌ研究や先住民研究の最先端の研究成果をアイヌ民族やその他の市民に提供する機会の創出が大切であると考えます。学部や大学院での授業に加えて、市民向けの種々の講演会やシンポジウムを広く公開することに努めています。また道内各地での出前講座にも取り組んでいます。  

当センターの活動の特徴は、アイヌ民族自身による民族固有の文化の伝承・発展を目指した諸活動を支援すること、国や地方自治体によるアイヌ関連政策への提言であると言えます。 2019年には、アイヌ民族に係る新たな法律が制定され、2020年には民族共生象徴空間ウポポイと国立アイヌ民族博物館が白老町に開設されます。

アイヌ研究及び先住民研究は、学問的には歴史も浅く、学術界においてもその基盤は確立されているとは言いがたい状況にあります。しかしその一方で、既存の学問領域にとらわれない学際性と、世界各地の先住民をつなぐ国際性は比類なきものと言えます。

アイヌ研究は、これまで民族学、歴史学、言語学、考古学からアプローチがなされ、研究成果が積み上げられてきました。しかし近年では、2007年9月の「先住民族の権利に関する国際連合宣言」の採択にも見られるように、法学、政治学、社会学、遺産学、健康科学など幅広い領域と関係しています。

私たちの研究センターでは、総合大学に設置された研究機関としての利点を活かして、人文学から社会科学、自然科学を含む学際的研究に取り組んでいます。また先住民族研究において長い経験と実績を有する北米、オセアニア、北欧、アジアの国々の研究機関と国際的な研究ネットワークを構築することも重要です。2018年からは日本学術振興会研究拠点形成事業(先端拠点形成型)に採択され、9カ国の研究機関をパートナーとしながら、国際先住民研究拠点の構築にも取組んでいます。

北海道から世界へアイヌ文化を発信すること、世界の先住民研究の動きをアイヌ民族に、そして北海道さらに日本に暮らすすべての人びとに伝えることを私たちの責務として、これからも歩んでいきたいと思います。


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